家族への給与(専従者給与)はいくらまで?否認されない金額と条件
配偶者や子どもに経理・受注対応などを手伝ってもらっていて、「給与をいくら払えば経費として認められるのか」で悩んでいませんか。生計を一にする家族への給与は、通常の外注費と同じようには経費にできず、青色申告・白色申告それぞれに独自のルールがあります。この記事では、専従者給与の上限の考え方と、税務署に否認されないための条件を整理します。
専従者給与とはどんな制度か(青色申告と白色申告の違い)
専従者給与とは、生計を一にする配偶者やその他の親族に事業を手伝ってもらい、その対価として支払う給与のことです。所得税の原則では、生計を一にする親族に支払った対価は必要経費にならないとされていますが、その親族が事業に専ら従事している場合に限り、例外として一定の金額を必要経費にできます(国税庁 No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除)。
この例外の中身は、青色申告と白色申告で大きく異なります。青色申告者は、事前に届出をした金額の範囲内で、実際に支払った給与のうち「相当であると認められる金額」を必要経費にできます。一方、白色申告者は実額の給与を経費にすることはできず、代わりに定額の「事業専従者控除」を差し引く仕組みになっています(所得税法第57条、e-Gov法令検索)。つまり、青色申告のほうが金額の自由度が高い分、金額設定の妥当性を自分で説明できる必要がある、という違いがあります。
専従者として認められる条件と届出のタイミング
専従者給与・専従者控除のどちらも、次の条件を満たす家族であることが前提です。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 生計を一にする親族か | 配偶者またはその他の親族(生計を一にしている必要がある) |
| 年齢 | その年の12月31日時点で15歳以上であること |
| 従事期間 | その年を通じて6か月を超える期間、専らその事業に従事していること(年の途中で開業した場合などは従事可能な期間の2分の1を超える期間) |
| 学生・他の職業との兼業 | 昼間の学生など他に主たる職業がある場合は、原則として専従者と認められにくい |
青色申告で専従者給与を経費にするには、あらかじめ「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出しておく必要があります。提出期限は、その年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合や新たに専従者が増えた場合は、その日から2か月以内)です(国税庁 A1-10 青色事業専従者給与に関する届出手続)。届出をしていない、または届出の記載金額を超えて支払った場合、超えた部分は必要経費と認められない場合があります。白色申告の事業専従者控除には、こうした事前届出は不要です。
青色申告の専従者給与「相当な金額」の判断基準と計算例
青色申告の専従者給与には法律上の金額の上限がありませんが、「相当であると認められる金額」を超える部分は必要経費にならないと定められています。相当性は、主に次のような要素で判断されます。
- 専従者が従事する労務の内容・専門性・従事の程度
- 同じ事業で働く他の従業員がいる場合の給与水準との比較
- 同種・類似規模の事業における給与の相場
- 事業自体の売上・利益の規模とのバランス
たとえば、届出書に「上限月額20万円」と記載していた場合、年間の給与総額は 200000 × 12 = 2400000円 が経費にできる目安になります。事業の利益に対して不釣り合いに高額な給与を設定すると、労務の対価として不相当と判断され、超過分が否認されるリスクが高まります。自分の事業でどの程度まで給与を設定できそうか目安を知りたい場合は、節税額シミュレーターで試算してみると判断材料になります。
白色申告の事業専従者控除(配偶者86万円・その他50万円)
白色申告の場合は、専従者に実際に給与を支払っていても、その全額を必要経費にすることはできません。代わりに、次のいずれか低い金額を「事業専従者控除」として必要経費とみなすことができます。
- 配偶者は最高86万円、配偶者以外の親族は専従者1人につき最高50万円
- この控除をする前の事業所得等の金額を「専従者の数+1」で割った金額
たとえば、控除前の事業所得が500万円で専従者が1人(配偶者以外)の場合、5000000 ÷ 2 = 2500000円 となり、これと50万円を比較して低いほうの50万円が控除額になります(国税庁 No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除)。実際にいくら支払ったかにかかわらず、この上限額しか経費にできない点が青色申告との大きな違いです。
確定申告の手続き(届出書・源泉徴収・配偶者控除との関係)
専従者給与を経費にした年は、その専従者を配偶者控除・扶養控除の対象にすることはできません。給与の金額によっては、専従者控除・専従者給与による節税額よりも、配偶者控除・扶養控除を使ったほうが世帯全体の税負担が軽くなるケースもあるため、事前に両方を比較しておくことが望ましいといえます。
また、専従者給与は税務上「給与」として扱われるため、支払う側の事業主には給与所得としての源泉徴収義務が生じます。金額によっては専従者本人にも所得税・住民税が発生し、年末調整や源泉徴収票の交付が必要になる場合があります。通常の外注費のように支払って終わりにはできない点は、あらかじめ押さえておきましょう。まずは節税額シミュレーターで、専従者給与ありとなしの手取り・税額の違いを確認してみることをおすすめします。
否認されやすいケース・よくある間違い
- 届出書を提出していない、または届出額を超えて支払っている
- 実際にはほとんど働いていないのに、名目だけの給与を支払っている
- 労務の内容・時間に対して明らかに高額な給与を設定している
- 白色申告なのに、専従者控除の上限を超えた金額をそのまま経費に計上している
- 銀行振込の記録がなく、実際に支払った事実を示す証拠が残っていない
こうした計上は税務調査で否認され、追徴課税につながる可能性があります。労務の実態(勤務時間・業務内容)を記録し、給与水準の妥当性を説明できるようにしておくことが大切です。金額の妥当性や配偶者控除との比較といった具体的な判断は、所轄の税務署や顧問税理士にご確認ください。
まとめ
- 青色申告の専従者給与に金額の上限はないが、「相当であると認められる金額」を超える部分は経費にならない
- 白色申告の事業専従者控除は、配偶者86万円・その他の親族50万円が上限
- 青色申告で経費にするには「青色事業専従者給与に関する届出書」を期限内に提出する必要がある
- 専従者にした年は配偶者控除・扶養控除は使えないため、事前に有利なほうを比較しておく
- 給与として源泉徴収の義務が生じる点も忘れずに準備しておく
よくある質問
Q. 専従者給与に金額の上限はありますか?
青色申告の場合、法律上の金額の上限はありません。ただし、労務の内容や時間に見合った「相当であると認められる金額」を超える部分は必要経費と認められません。白色申告の場合は、配偶者が最高86万円、その他の親族は最高50万円という定額の上限があります。
Q. 学生の子どもを専従者にすることはできますか?
昼間、学校に通っている学生は、他に主たる職業があるとみなされ、原則として専従者とは認められません。ただし、夜間の学校に通っている場合など、事業に専ら従事できる実態がある場合は個別に判断される余地があります。
Q. 専従者給与を払うと、配偶者控除は使えなくなりますか?
はい。専従者給与や専従者控除の対象にした年は、その親族を配偶者控除・扶養控除の対象にすることはできません。どちらが世帯全体で有利かは所得状況によって変わるため、事前に比較しておくことをおすすめします。
Q. 届出書を出し忘れた場合、その年は専従者給与を経費にできませんか?
青色事業専従者給与に関する届出書は、原則としてその年の3月15日まで(年の途中で開業した場合などは2か月以内)に提出する必要があります。期限を過ぎて提出した場合、その年分については適用できないのが原則です。翌年分から適用を受けるために、早めに届出をしておきましょう。